塾長の思い

家庭教師から始め、塾としての形ができて十五年以上たちました。

そしてかつての生徒さんが立派な社会人になられた姿を見せてくれたりするようになってきました。

そういうお姿を拝見し、人間の可能性は常に想像よりも遥かに大きいとあらためて思います。

 

学力を育てる真の目的は、子どもたちが生きる力を獲得することです。

真摯に学問と向き合うことで、彼らは徐々に、しかし確実にたくましくなってゆきます。

そして子どもたちの未来は、現状の成績の良否が決めてしまうものではありません。

 

ITCの導入は進みましたが、教科書とノートを開いた机に向かう勉強と、そのための時間を無くすことはできません。

タブレット学習のみで力が着く時代になるのはまだ先のようです。

教科書と問題集に向き合う時間にどれほど大切な意味を持たせることができるかが私の最も重要な仕事です。

そのために日々全力を尽くします。

 

同時に、机に向かう勉強だけでは生きる力の大切さがなかなか実感できません。

そこで、たとえば土日には夕食を子どもたちで作る取り組みを続けてきました。私の家族も一緒に同じものを食べています。

買い物も会計も生徒たちが自分で行います。

料理ができるようになると、子どもたちはしっかりしてきます。会計では計算の大切さはもとより、"ほうれんそう”(報告・連絡・相談)の大切さもわかります。

 

私はよくこう言います。

「君たちには楽しいことや好きなことはもちろんのこと、気に入らないことや面倒なことや辛いことや嫌なことがいくらでもあるだろう。しかし、もし君たちが今からすぐに世界一周の旅に出ることができたら、帰って来た頃にはその楽しさや好きなことや悩みや嫌さは、全く消え去ってしまうか別なものに変わってしまっている可能性が大いにある。それくらい、この世界をよく知ることには意味がある。」

 

そして実際に「若い者に旅をさせる」かわりに、厳選した評価の高い映画やドラマ、ドキュメンタリー番組を授業に利用しています。

理解しやすさや親しみやすさを重視してアニメも使います。

私が百万の言葉を費やすよりも、人々が全力を尽くして造り上げた良い物語、ドキュメンタリーが子どもたちの心にもたらす感動は、心の宝になり得ます。

そして子どもたちの夢や希望や理想は自然に沸くものではなく、読書をはじめとするさまざまな疑似体験と自らの人生の実体験が相互に作用して得られるものです。

見終わったら、全員で感想を話す時間を持ちます。頂いた体験記の中にもありますが、他者の感想や意見を聞くことが子どもたちの視野をさらに広げ、心を揺さぶると同時に、言葉や映像が説明する状況を理解する大切さを教えてくれます。

 

これが授業であると理解されにくいこともありますが、しばらく続けていると、最も成績を上げにくいと言われる国語の成績が抜群に上がるのです。特別な問題集に取り組まずとも、国語を得意としていなかった生徒が偏差値を60以上に伸ばした例もあります。

やがて国語の力がすべての教科の力を引き上げることになります。

 

一方で、学力向上には思いがけない盲点があることを塾を営みながら経験して参りました。

「見聞きしたことがないことは、教えられてもよく分からない」という一見単純ですが、重要な現象です。

たくさんのものを見て、薄くても広く見聞きしていることは、子どもたちにとって大きな助けになるのです。

また、特に近年の国語の問題は、高校、大学の両入試を問わず、コミュニケーションや相互理解、そしてヒューマニズム(人間性の大切さ)について触れる題材が多く使われているようです。人の気持ちを考えること、他者の痛みを理解できること、利己的に過ぎないようにすること、そのようなことを土台としたテーマを持つ論説や小説を多く見るようになりました。

高校入試はもちろんのこと、共通テストは難関大学と言われる大学の二次試験においても、そこで問われるの一貫して、広い意味にはなりますが人間性に関することです。

 

当塾の時間は見かけが長いですが、受け身の授業ではありませんので、各々が自分なりに取り組みます。

休日日程の日には、小一時間程度楽器の練習をしたり、生き物の世話をしたりする生徒もおります。中身の濃い話を見たりすると、話し合う時間がたくさんになって、机に向かう時間が足らない(汗)と焦ることもあります。

自由な質問ができますから困り続けることもなく、互いに教え合ったり、他人の問題をみんなで考えていくこともあります。

時には生徒たちを連れて河原や公園、科学館等に出掛けたりもします。

 

そのようにして、子どもたちが、やるべきことをやり、心が安定し、朗らかになり、大切なことを学び、またさらに努力することができるようになる姿を見てきました。

「一日があっという間に過ぎてしまう!(笑)」と生徒が話すのを聞き、私は嬉しく思います。

 

 

 

2024年4月(改稿)

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